藤尾伸三 (ふじお しんぞう)

東京大学研究者紹介

電子メールのアドレスは fujio@aori.u-tokyo.ac.jp です. 研究室の直通電話は 04-7136-6061 です.
大学院教育は, 新領域創成科学研究科 自然環境学専攻 に所属して行っています.

講義の案内

研究の紹介

専門は海洋物理学です. 主に, 海洋の深層循環について研究しています. 現在, 行っている研究テーマについて解説してみました.

学生を募集中です. 一緒に研究に取り組みたいと思う学生は連絡をください.
また, 学生は, 海洋研究所で新しく始まった「深海教育プログラム」に参加すると, 多々, メリットを享受できます.

深層循環について

深層循環とは, 数千メートルの深さを流れる海流系のことです. いわゆる「海洋深層水」とは関係ありません. 人類のフロンティアは「宇宙と深海」といわれますが, まさしく, この深海の流れのことです. さまざまな技術が進歩した現在でも, 深海の状態 (流れ, 水温, 塩分など) を調べることは容易ではありません.

海洋深層の流れについて, 正しくない知識が流通しています. 「海洋深層水」がグリーンランドや南極で沈んだ水であるというのは, その最たるものです. また, 決して未知の代物ではありません. 19世紀末の英国チャレンジャー号の研究に端を発する点では他の近代的海洋学のテーマと同じ歴史を持ち, 現在の知識の多くは1970年代までに得られたものです.

◎海溝とその周辺の流れの観測的研究
日本周辺には日本海溝や伊豆小笠原海溝が連なっています. 海底付近を流れる深層流がその影響を強く受けるのは自明ですが, 海溝にはその斜面に沿って流れる深層流があることがわかりました. その流速は場所によっては10cm/s以上もあり, 大西洋西岸を南下する北大西洋深層水の流量に匹敵します. 水がどこから海溝に入り, どこで出ていくのかが現在のもっぱらの関心です.
◎深層流の長期変動の研究
一般に, 深海は静寂と思われがちですが, 実際にはいろいろな流れがあります. 表面波は別にして, 大規模な海面の昇降による圧力は海底までの水に一様にかかり, 海底にまで達する流れを引き起こします. たとえば, 潮汐による流れは海底上でも観測されます. 潮流は1日以下の周期ですが, 流速計で流れを測ってみると, 数ヵ月周期の顕著な変動があります. われわれを含めて, これまでは1〜2年の計測しかしていないので, 数ヵ月の変動について明確な記述はできませんし, もっと長い数年周期の変動があるかもしれません. 日本近海の強い深層流を対象に, 5年程度, 継続的に測流を行うことでその長期的な変動を調べる計画をたてています.
◎診断的手法による世界海洋循環の研究
「海の日」の一般公開
深層循環の解説

黒潮について

日本近海を流れる黒潮は, 大蛇行と呼ばれ, 日本の南で大きく弯曲する流路を取ることがあるほか, さまざまに流路や流量を変化させます. このような黒潮の変動は, 日本の天候や産業に影響するといわれています.

表層の流れについては, 実は, それほど詳しくないのですが, 周辺の研究者との共同で行っています.

潮位データを用いた黒潮モニタリングの研究
表層を流れる海流は海面の傾きを伴うため, 黒潮の離岸・接岸に伴い, 沿岸の水位 (海面の高さ, 潮位ともいう) が変化します. さいわい, 日本近海には気象庁や海上保安庁などにより多数の潮位計が設置されていますので, そのデータを利用することで, ある程度, 黒潮の挙動をモニターすることができます.
◎日本近海の水温・塩分データセットの作成
日本周辺の水温の月別データセットは気象庁が行っていますが, 速報性を重視するため, BATHY通報など信頼性の低いデータを主に使って作成されています. CTDなどのデータは一般には数年後を経て日本海洋データセンターに集められるので, これらのデータを使えば, さらに信頼性の高いデータセットを作成できます.
◎海底ケーブルによる黒潮のモニタリング
弘前大学の力石先生が三宅島に設置された, 海底ケーブルの電位差を計るシステムを譲りうけました. 海流が地球磁場の中を流れることで, 海流をはさんで電位差が生じます. 電話線を目的として設置された海底ケーブルを電圧計の巨大なコードとして使うことで, 三宅島と大島, 三宅島と八丈島の間の電位差を計っています. この観測に関しては, NTT東日本にご協力いただいています.

海洋物理学の講義

◎千葉大学 理学部「地球流体科学」
大学2,3生向け. 前半は, 海洋物理学の基礎的な内容. 後半は地球流体力学的な内容. 数式を使いつつ, 図などでも説明
◎東京大学大学院 新領域創成科学研究科「海洋物理環境論II」
修士向け. 海洋物理学の基礎的な内容に関する講義. 運動方程式など.
◎東京大学大学院 新領域創成科学研究科「海洋流体力学概論」
修士向け. 海洋物理学一般に関する講義で, 水塊や熱塩循環などを担当. 主に水塊の定義や分布に関する記述的な内容
◎東京大学大学院 新領域創成科学研究科「深海科学概論」
修士向け. 深海に関するオムニバス形式の講義で, 海洋物理学を担当

藤尾伸三 (fujio@aori.u-tokyo.ac.jp)